聴覚障害者の方々が使用しているコミュニケーション手段で、“手話”があります。手話言語条例が各地域で制定されるようになり、手話も言葉の一つとして、より広まりつつあります。電車に乗っているときなど、私たちの生活場面で手話を見かけることも増え、手話を身近に感じるようになったと思います。
地域サークルの1つで、手話サークルがあり、軽い気持ちで参加し、手話を学ぶようになりました。
手話学習では、まずジェスチャー表現で相手に伝える練習をします。それから簡単な単語(挨拶や自分の名前)の表現を学び、伝える練習をします。そして平仮名50音に該当する、“指文字”を覚えます。単語がわからなくても、この指文字を知っていれば、時間がかかっても概ね伝えることができます。
手話表現することになかなか慣れず、手話で挨拶や自己紹介をスムーズにできるようになるまで、1年ぐらいかかりました。繰り返し練習して、サークルの皆さんとなじんで、ようやく何の援助もなく、手話で挨拶や自己紹介ができるようになりました。
正直、私自身、もう少し早く手話でコミュニケーションが取れると思っていました。相手に何かを伝えることが、これほど不安だったり、もどかしいものとは、思ってもみませんでした。手話を学ぶ過程で、普段のコミュニケーションについて、色々と思い返すようになりました。
人は生後間もなく、いろんな言葉を聞きます。指差しやジェスチャー表現を覚え、コミュニケーションや言葉を習得していきます。
もう覚えていませんが、きっと私も子供の頃は覚えたての言葉で伝えるとき、不安だったり、もどかしかったと思います。視線を合わせて挨拶をすることも難しかったと思います。今では当たり前に話している言葉も、いろんな過程があって覚えたんだろうなと思います。平仮名を読んだり書いたりするのも、繰り返してやっと覚えたと思います。そして覚えた言葉を使って、相手に伝えることがどれほど大変だったのかなと考えたり、改めてコミュニケーションの難しさを痛感するようになりました。
しかし同時に、私の伝えたいことが相手に伝わったとき、相手の思いを理解できたときの嬉しさも改めて実感できるようになりました。
人と人とのコミュニケーションは難しくストレスにもなりますが、楽しい、嬉しいと感じることも必ずできる・・それに気づいてから、カウンセリングなどの対人業務に前向きになれたように思います。
この楽しさが継続して手話を学びたい気持ちにつながっていると思います。今後も手話を継続して学び、コミュニケーションの楽しさを忘れずにいたいと思います。