私たちの感情には、「喜怒哀楽」と言ってさまざまな種類があります。人間誰しも、日常生活のなかで、他者の言動や何らかの出来事に対して、「思い通りにいかないな」と感じることは多々ありますよね。そんな時、イライラっとしたり、ムカムカしたり、嫌な感覚が生じるのではないでしょうか。
感情には、「ポジティブなもの・ネガティブなもの」というように、便宜上は、分類されることはありますが、例えば、「怒り」が単純に「ネガティブな感情」だとは決められない気もいたします。
今回は、さまざまな感情のなかから、「怒りの感情」について見ながら、怒りとの付き合い方について考えてみたいと思います。
人が怒っている状況を傍らでご覧になったことはあるでしょうか?「ああ…えらい怒りようだな…近づかないほうが良さそうだな」「何があったのかな…いつもの〇〇さんじゃないみたいだな」「そこまで怒るような事があったのかな?」等々、見ている側にも様々な考えが湧いてくるかと思います。私たちは、他者の怒りに気づくことは、外側の事象として眺めることができるため、わりと容易なのかもしれません。ただ、「自分の怒りに気づく」、ということは、「意外に難しいな」と感じることも多いのではないでしょうか。怒りの感情と上手く付き合っていく上では、まずは、「いま自分は怒りを感じているのだな」と気づけるということが、ポイントになりそうです(自分を「外側の事象として眺める」わけです)。まずは、「気づく」ことで、怒りが大きくなって手の付けられない状態(身近な人間関係のなかで取り返しの付かないトラブルが生じる等)になる前に、適切に対処できるように思われます。
では、気づくためには、まず、何が必要でしょうか。「私の場合、『怒りのサイン』は、こういう感覚だな」「タバコをやたら吸いたくなる時は、そういえば怒りを感じるような嫌な出来事があったな」 「そういえば、戦闘ゲームばかりに夢中になってるな…」「ふて寝したくなるな」などと、日頃から振り返ってみるのも一つの方法でしょう(自分の「怒りパターン」について列記してみる)。自分の怒りになんとなく気づけるようになると、「ああ、ちょっと気をつけよう」「黄信号だな」と、少しセーブがきく状態を作ることができるでしょう。
ただ、気づいただけで怒りの感情が消え去る訳ではなさそうです。どうしたら良いのでしょうか。できれば、「私には怒りの感情があります。こんな風です」と外側に出せれば良いのですが、そのためには、「受け止めてもらう」という事も同時に必要かもしれません。怒りの感情は、何らかのメッセージを含んでいるため、大切に扱われる必要があるのです。怒りの感情をよく見つめていくと、実は、「不安」や「悲しみ」という感情が隠れていることも多いものです。このように、怒りの感情との付き合う上では、認知行動療法の技法を取り入れてみると、やりやすいかもしれません。「自分の怒り」について、「いつ、どこで、どんな時、どんな思いが、どう行動したか、結果はどうだったか」などを「書く」ことで整理していくことで自分の怒りの傾向をつかんでおく。目に見える形で記録しながら取り組むすることは、怒りだけはなく、自分自身を客観視するためにもお勧めです。そして、怒りと上手く付き合うことができたという時は、自分はどんな風に対処していたのか、振り返ってみて、次に活かしていければ幸いです。自分なりのパターンを知っておくと、きっと後々、役立つことは多いと思います。生きていれば、怒りを感じることは、とても自然なこと。自分や周囲の人を大事して、お互い気持ちよく、より充実した生活を送るためにも、「怒り」との付き合い方について、少し関心を持ってもらえたら、と思います。