カウンセリングが終わり、クライアントさんを見送った後で、「その人それぞれに『悩みと向き合うことができる力』をお持ちなのだなあ」と感じることがたびたびあります。カウンセリングの場では、クライエントさんの気持ちを整理したり、カウンセラーと一緒に全体をちょっと違う方向から眺めてみたりします。見る方向をちょっと変えることで、不安にもなることもありますが、視界が広がり、少しずつではあっても悩みとの距離を置けるようになります。
それでも、困っている状況は、数回のカウンセリングを受けてもなかなか変化しないこともあり、悩み疲れてうんざりしてしまうことがあるかもしれません。そんな時、特にうつ病やパニック障害の症状が長引いているクライエントさんは、「トンネル」に入っている、と表現されることがあります。
この、長い「トンネル」に入っていると感じるとき、一番苦しい時ではありますが、「これが、まぎれもない“私”の悩みなのだ」と認められたとき、かえって腹がすわったり、「この悩みとつき合っていくのだ」という、「良い意味での“開き直り”」「新たな人生の開かれ」とでも言えるような境地へ向かっていくポイントがあるように思います。
そして、いつの間にか、「今日もちゃんと“悩めている”ね、私」と、あるがままに自分を眺められるようになっていく。「悩みなんてなくしたい」「いや、悩みがなくなっても、どこか寂しいかもしれない」、「いや、やっぱり一日も早くすっきりしたい」という葛藤をくり返しながら生きていくうちに、ある時、さほど「悩み」が気にならなくなったりします。
もちろん、悩みや困難の大きさは、人それぞれですし、「トンネルをぬける時期」もまた、人それぞれ違うものです。それぞれが抱える「トンネル」の長さが違いますし、そのトンネルも、自分以外の人には意外に短く見えていたりすることもあります。
私たちカウンセラーは、クライアントさんと一緒になってその「トンネルの正しい長さ」を計ったり(認知行動療法の手法の得意なところです)、「トンネル」を抜けるための方法を考えたり、クライエントさんが本来持っている「その人らしさ」を活かして生きていく力を見つけるためのサポーターでもあります。