当院より、発達障害についてご説明します。
発達障害は、生まれもった発達上の個性(おそらく脳の特性)が、一般的な人(定型発達)と異なっているために、日常生活に困難をきたしている状態をいいます。
時々誤解されますが、下記のように、「普通の人と違う」個性を持っている人を発達障害と呼ぶのは誤りです。生まれもった個性が人と異なっていても、生活上の支障がなければそれを「障害」と呼ぶのは誤りです。それは差別にもなります。ちょっと変わった個性、発達のアンバランスを持つだけならば、「発達凸凹」と呼ぶのが適当だと主張している医師がいますが、私もそれに同意します。
しかし、現代社会は「発達凸凹」を持って生まれた人が生きにくい社会でもあります。「発達凸凹」を持つ人は、「空気が読めない」「ミスが多い」「注意力が足りない」「怠けている」などと責められたりして苦労される傾向があります。
発達障害の種類
自閉症スペクトラム障害
対人関係やコミュニケーションに問題が生じやすい状態です。
広汎性発達障害(PDD)・アスペルガー障害・自閉症などの障害が含まれます。
コミュニケーションの問題(会話のやり取りが苦手、相手の表情や身ぶりから相手の気持ちを読み取るのが苦手、他人に関する興味が薄い、など)や、「こだわり」の問題(いつも同じ行動をすることにこだわる、同じ物を同じように並べるというこだわり、興味の範囲が非常に狭い、など)が特徴的です。「マイペース」「わがまま」「空気が読めない」と周りから言われ、学校でイジメに遭ったり、会社で叱られるなどの社会生活上の支障が生じやすい状態です。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
多動性(落ちつかず、そわそわする、貧乏ゆすりが止められない、など)・衝動性(授業中に唐突に発言する、順番が待てない、思ったことをすぐ口にする、など)・不注意(忘れ物が多い、試験や仕事でケアレスミスが多い、締め切りに間に合わない、ケガが多い、など)を中心とする障害です。
学習障害(LD)
知能の遅れは無いし、視力や聴力にも問題が無いのに、「読む」・「書く」・「計算する」行為のいずれか一つ以上に障害がある状態です。
代表的なものを挙げましたが、同じ人がこれらの障害の複数の障害を持つことも珍しくありません。
発達障害の治療
どの障害に対しても、まずはご本人や周囲の人がその特性を知り、環境を調整することが大事です。たとえば、自閉症スペクトラム障害の場合、あいまいな含みのある言葉を使わないようにするとか、言葉のコミュニケーションばかりにならず、文字や記号などの視覚的な手がかりを使う、などです。特に、子どもの自閉症スペクトラム障害や学習障害の場合は、そのような視点での「療育」が中心となります。
発達障害の人が大人になって不適応を起こし、パニック障害やうつ病、睡眠障害などを引き起こすことがあります。その場合、薬物療法も有効ですが、環境調整の視点を忘れないことが大事です。
ADHDの場合は、アトモキセチンやメチルフェニデートといった薬物を用いた薬物療法が有効な場合があります。
発達障害の診断とその援助に参考にされる心理検査についてはこちらを参照下さい。→ウェクスラー式知能検査(WAISーⅣ)の意味と解釈について